5月から始まった関門エリアに対するインタビューアンケートですが、予定の72組を終えましたのでひとまず終了します。
そこで得られたアンケートの結果やそこから考える考察をまとめてみましたので、興味がある方はお読みください。
A.アンケート調査業務の概要について
1.調査業務の目的
現在、様々な国の個人観光客(FIT)が旅先として「関門」を訪問している。FITは、ここの趣味嗜好から、旅先で観光を楽しむため、インターネット、SNS等を使い情報収集を行っている。 このため、FITにとっての「楽しい関門」の実態をつかむためには、関門への訪問観光客が「何を」「どこで」「どのように」楽しんでいるかといった声を知ることが、今後、関門地域の経済振興を図る上で必要である。
そこで本業務は、事業者による観光客受入サービスの充実・創出の機運の醸成を図るため、地域の経済振興を担う事業者へFITの生の声を伝えることを目的とする。 併せて、FITにとっての「楽しい関門」を喚問地域の魅力として国内外へ発信し、旅行者の増加を図るため、FITの生の声をWeb等で旅行者にわかりやすく伝える発信も行うこととする。
2.調査業務の履行期間
平成30年4月23日から平成30年11月30日まで
3.調査業務の内容
・インタビュー形式にて以下を質問
(1)氏名
(2)国籍
(3)年齢
(4)訪日回数
(5)訪関門回数
(6)関門エリアに来た理由
(7)関門エリア観光にあたっての情報源
(8)関門エリアで食べたいまたは食べた料理
(9)関門エリアで行きたいまたは行った観光スポット
(10)関門エリアを訪れて満足したまたは不満だった点
・インタビュー時の上記質問をもとに、ローカルウェブメディア「かんもんノート」(https://kanmonnote.com)にてインタビュー風景写真および英訳付きでの配信
4.調査業務の実施状況
・有効回答数:計72組
・配信数:計72組
・調査場所
(1)門司港エリア36組(海峡プラザ前)
(2)唐戸エリア36組(カモンワーフ前・唐戸市場前・赤間神宮・ウズハウス)
B.アンケート調査業務の結果について
1.回答者の属性
(1)国籍
日本人36組・外国人(韓国人/台湾/香港)36組と設定していたが、外国人は韓
国人が一番多く18組、台湾が13組、香港が5組でした。
(2)年代
20代が最も多く27組だが、ほどよく様々な年代からアンケートを取れました。
2.訪関門回数(日本人)
36組中初めての来訪が22組、またリピートしている方々は合計で14組となります。
3.訪日回数および訪関門回数(外国人)
初めてもしくは2回めの訪日が関門エリアという外国人観光客は全体の17%、何度か訪問するうちの1回が関門エリアという外国人観光客がほとんどです。
(1)訪日回数
(2)訪関門回数
4.関門エリアを訪れた理由
北九州市は「門司港レトロの風景や建物に魅力を感じて」、下関市側は「海鮮・お寿司を食べたくて」との回答が多かったです。その他の理由としては「主目的地に近かったから」「都会でない日本を見たくて」「関門エリア在住の友達に会いに」などが見受けられました。
5.関門エリア観光にあたっての情報源
若い人たちはインターネットやSNS(特にインスタグラム)で情報収集、世代が上の方ほどガイドブックを購入する傾向がありました。また海外の方はブログを参考とすることも多く、しっかりリサーチして訪れる人が多い印象でした。反面日本人はリサーチ無しで来る人も少なからずいました。日本語は読めないが「食べログ」の点数だけ見てお店を選ぶ台湾人もいて興味深かったです。
6.関門エリアで食べたいまたは食べた料理
ほとんどの人が「ふぐ」と「焼きカレー」を食べている。「瓦そば」もある程度の認知がされている印象だが、それ以外の「豊前牡蠣」「ちゃんらー」「とんちゃん鍋」は知名度が圧倒的に低く、知っている人は僅かでした。カモンワーフで取材したことも関係するのでしょうが、下関エリアではほぼ全員が唐戸市場に行き食事をしています。
7.関門エリアで行きたいまたは行った観光スポット
門司港側では門司港レトロ街や九州鉄道記念館が人気であり、「甲宗八幡宮」に行った人はいませんでした。下関側では海響館や唐戸市場、巌流島が人気のスポットで、赤間神宮に行った人も散見されました。また関門トンネル人道は国内外問わずに人気です。
8.関門エリアを訪れて満足したまたは不満だった点
門司港側は景色の良さを感じる人が多く、レトロ外の雰囲気を楽しみに訪れている印象。下関側は食べ物が美味しいといった回答が多数得られました。共通するのは人が優しいというコメントです。不満なところは共通して夜にお店が空いていない、お店が閉まるのが早いといったところでした。下関側はバスの不便さを訴える声もいくつかありました。
C.アンケート結果およびインタビュー現場からの考察について
1.関門という言葉は通用しない
インタビューをする際に一番驚きそして苦労した点は、観光客が関門という言葉を知らないということです。関門海峡・関門橋というビッグワードがありながら、関門エリアがどこなのかを認識していないのです。門司港にいる人は福岡県もしくは九州にいると思っているし、唐戸にいる人は山口県もしくは本州にいると思っています。対岸がどこなのか知らない人も少なくなく、また連絡船で5分で渡れるという事実も知らない人も予想外に多かった印象です。とても残念なことだと思いますが、これは逆に考えると大きな伸びしろであって、これだけコンパクトなエリアで2つの異なった特徴を持つ町を行き来することができることが今以上に認知されることで、観光客や宿泊客を増やすことが可能だということです。
2.外国人のリピートについて
36組の外国人観光客にインタビューをして、リピーターだった観光客はわずか2組。34組の観光客が関門エリアは初めてだとの回答でした。また初の訪日が関門エリアだったケースは1組であり、多くの方が東京や京都などを訪れた後にこのエリアを観光地として選択し訪れます。日本には素晴らしい場所がたくさんあり、外国人観光客にしてみれば、次は日本のどこに行こうかと思いを巡らすことでしょうが、関門エリアとしてはいかにしてリピートしてもらうかという視点を持って観光推進策を策定しないといけないと考えます。1泊や2泊では満喫しきれないような「ふぐ」「焼きカレー」に次ぐ食の魅力や、「鉄道記念館」「海響館」などのスポットを生み出していく作業が必要だと思います。「門司港駅」が改装中で残念だったという声も多かったので、そこも上手く絡めることが可能であればリピーターは増えるのではないでしょうか。更に海外ブロガーへの認知やSNS(特にインスタグラム)の活用が観光客増加の成否に大きく関わってくると考えられます。
3.夜も楽しめる街にするために
不満だった点を聞いたときに目立った意見としては、夜にお店が開いていないというものでした。飲食店は基本的に民間で運営されているところばかりであり、様々な事情があって閉店の時間を決めていると思います。多くの理由が需要だと想定できますが、夜遅くまでお店を開けていてもお客さんがこないのであれば不利益なことです。ただし一方で観光客がそのことを残念に思っていることも事実であり、これはリピート率を大きく悪化させる要因のひとつだと考えます。対策としては各店舗に努力をお願いするだけでなく、街全体として解決策を見出す必要があるのではないでしょうか。
4.観光客に街の魅力をいかに伝えるか
インタビューは話をしていくうちに途中から観光案内になることも多く、具体的にはオススメの飲食店を聞かれたり、このエリアで行くべきところがどこなのか相談されたりしました。そのことからの思いつきなのですが、案内所と言われる場所を持つ受け身のスタイルよりも、案内人が街を回遊して積極的に話しかけていくようなスタイルに転換することで、より観光客のニーズに答えられるのでは無いかと思います。人は親身になって相談にのってくれたり、いろいろと知らないことを教えてくれたりしたことに対して強い恩義を感じ、結果的にこの場所はいいところだったという印象を持ちます。満足した点でも人が優しいというコメントを多くもらっていることはまさにそれだと思います。
5.さいごに
インタビューアンケートはペーパーアンケートとは全く異なり、まず協力者を見つけることが大変な作業でした。写真はダメだからと断られるケースは良い方で、無視されることも少なくありませんでした。それでも対話形式であるインタビューで得られた結果はペーパーアンケートでは決して拾うことの出来ないような感想や意見が引き出せ、さらに協力者のテンションを感じられるため、マーケティングのツールとしては素晴らしいものだと感じました。今回はウェブメディアでの文字の発信だったため、インタビューで感じた観光客のテンションを伝えることに苦労しました。今後可能であれば映像でインタビュー内容を伝えるような取り組みが出来れば、さらに質の高いものになり、見た人にもより伝わりやすいのではと感じました。
観光客との会話は楽しい時間でした。実際に観光客の率直な言葉を聞けることは地元を愛する人間として非常に勉強になりましたし、下関市にてゲストハウスを運営している立場・目線からしても気づきが多い有益な時間でした。ありがとうございました。